2026年8月20日、苫小牧学校図書館協会のご依頼で、学校司書・司書教諭の先生方を対象に「生成AIと著作権」をテーマとした研修を行いました。
同協会での研修は、2026年1月に続いて2回目です。前回の「学校著作権の基本」を土台に、今回は学校図書館でも広がりつつある生成AIとの付き合い方を著作権の視点から一緒に考えました。
苫小牧の学校司書・司書教諭約20名と対面90分の双方向型研修
研修は苫小牧市内の施設で対面形式・90分で実施しました。参加されたのは、市内の学校司書・司書教諭の先生方約20名です。
研修では、AhaSlides(スマートフォンから匿名で回答できる投票・アンケートツール)を使いました。問いかけと回答を重ねながら進める形式です。勤務歴をうかがうと、回答者15名のうち10名が16年以上でした。学校図書館を長く支えてこられた先生方が中心だったのです。
アイスブレイクの「苫小牧のいいところは?」には、「雪が少ない」「夏でも涼しい」という声が多く集まりました。「あまり暑くない(はずなのに…)」という回答からは近年の蒸し暑さもうかがえます。「生ホッキ貝がおいしい。図書館が割と大きい」という、図書館の先生方らしい回答もありました。
学校図書館は日常的に著作物と向き合う場所です。新着図書のポスター・しおり・読み聞かせのチラシ・書影を使った掲示など、判断に迷う場面は少なくありません。そこに今、生成AIが加わりつつあります。実際、研修中の問いかけでも、生成AIの使い道として「しおりの表紙」「新着図書のポスター」「読み聞かせチラシ」が挙がりました。
研修の主な内容
今回は次のトピックを扱いました。
- 最近の著作権に関わるニュース
- 著作権を知るべき理由(子どもの逮捕者が出た事例、生成AIの広がり)
- 学習指導要領・教員採用試験・教科書にみる著作権
- 著作権の基礎(知的財産権、他人の著作物を使うには原則として許諾が必要)
- 著作権の制限(学校の授業での例外)
- 授業目的公衆送信補償金制度とSARTRAS
- 生成AIと著作権、素材サイトの利用規約
- 今日から、自分から、できることから
著作権法第35条(学校などの授業の過程での利用を認める規定)により、一定の条件のもとでは許諾を得ずに著作物を利用できる場合があります。ただし、利用の主体や目的、必要と認められる限度か、権利者の利益を不当に害さないかなど、条件全体を確認することが欠かせません。詳しくは以下の第35条の解説記事をご覧ください。

生成AIと著作権の関係は現在も整理が続いている論点です。そのため、文化庁の最新の見解を確認しながら判断することが大切になります。また、身近な素材サイトにもそれぞれ利用規約があり、サービスによって条件が異なる点にも触れました。
研修のポイント:著作権は「作った人に心を寄せる」もの
学校著作権ナビゲーターとして研修を重ねるなかで、「著作権は難しい」という声をよく耳にします。今回の研修中アンケートでも、「著作権」から連想する言葉として「難しい」「わかりにくい」が目立ちました。
しかし、同じ問いには「守る」「誰かの宝物」「作った人」という言葉も並んでいました。著作権は、使う人を縛るためだけのルールではありません。作った人の思いを守り、次の人へ届けるためのしくみなのです。
主催者の方は、研修で印象に残ったこととして次のように書いてくださいました。
自分が作ったものを他の人が使うとなったら、どこまで許可できるかは一人一人考えが違う。著作権は作った人や伝える人に心を寄せるものである。ということ
いたずらに恐れるのではなく作った人の立場に立って考える。この視点こそ、今回いちばんお伝えしたかったことです。
参加者の声と今後の展望
主催者の声(苫小牧学校図書館協会)
依頼の決め手については、次のようにお答えいただきました。
以前講演をいただき、非常に好評だったため。
1月の研修を受けて、再びお声がけいただけたことを大変ありがたく感じています。また、この内容を勧めたい相手として「教員」に加えて「小・中・高校生」を挙げていただきました。子どもたちにも伝えたい内容と受け止めていただけたのは、大変ありがたいことです。
研修参加者の声
復習できて良かったです。学校の子たちのために自治体がお金を払う名前は…。ずっと気になっていました。生成AIは、これから児童と積極的に活用するために今日習ったことをおさらいしておきます。
著作権や、特に生成AIを巡る情勢は目まぐるしく変化しており、学習し続けることが大切だと思いました。本日はありがとうございました。
著作権の本を最近小学校に購入したばかりでタイムリーな研修会でした。AIは日々、情報が変わっていくんだなぁと学びになりました。蒸し暑い中、ありがとうございました。
利用規約を読んだことがなく、いらすとやにルールがあることや、出版社によって考え方が大きく違っていることなど全く知りませんでした。今まで何となく使っていたのだな、と恥ずかしくなりました。世界の人々が努力して様々な思いを込めて作り上げたものを守っていくために、著作権についてもっと目を向けていかなくてはいけないと思いました。是非また講演に来てくださったら嬉しいです。お忙しい中、たくさんの準備をしてくださりありがとうございました。
著作権についてよく学べました。今後の掲示物等の制作にいかしていきたいと思います。本日はありがとうございました。
「今後の掲示物の制作にいかしたい」「学習し続けることが大切」という声は、これからの学校図書館を支える先生方の心強い一言です。前回の基本を今回の生成AIへつなげられたことも、2回目の研修ならではの手応えでした。
研修中アンケートから見えたこと
生成AIの利用経験:回答者16名のうち15名が「使ったことがある」と答えました。用途は、文章の校正・要約、チラシや案内の作成、しおりの表紙や新着図書のポスター、年賀状のイラスト、旅行の計画、学級のテーマソング作りなど、幅広いものでした。
著作権キーワードの認知度(4段階):「海賊版」3.8、「著作権」3.7、「知的財産権」3.5が高かった一方、「著作権法第35条」は2.2、「SARTRAS」は2.3にとどまりました。
生成AIキーワードの認知度(4段階):「ChatGPT」3.9、「Gemini」3.7、「Copilot」3.2に対し、「文部科学省のガイドライン」は2.7でした。「ハルシネーション」(生成AIがもっともらしい誤りを出力する現象)は1.9です。
生成AIを使う経験は、すでに多くの先生方に広がっています。その一方で、判断のよりどころとなる制度やガイドラインは、まだ身近とはいえないのかもしれません。今回の研修では、このあいだをつなぐことを目指しました。
おわりに
苫小牧学校図書館協会の皆さま、ご参加いただいた先生方、2度にわたり貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
生成AIを巡る状況はこれからも変わり続けるでしょう。それでも、作った人に心を寄せるという原則に則って考えれば迷ったときの道しるべになります。学校図書館から子どもたちへ、正しく知って正しく使う姿勢が広がっていくことを願っています。
研修のご依頼について
学校司書・司書教諭の先生方をはじめ、教職員向け、児童生徒向けの研修にも対応しています。図書館での掲示物や書影の扱い、生成AIとの付き合い方など、現場の悩みに合わせて内容を組み立てますので、お気軽にご相談いただけるとうれしいです。
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