教員が作った教材・テストの著作権は誰のもの?職務著作の5つの要件

著作権の基礎(用語・考え方)
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日々の授業で作る学習指導案や授業スライド、ワークシート、そして定期テスト。同僚や他校の先生から「コピーさせてください」と頼まれて、自分の判断で渡してよいのか迷ったことはないでしょうか。

この記事では、教員が作った教材の著作権は誰のものなのかを「職務著作」という仕組みから整理します。職務著作の5つの要件、教材の利用を許可するときの確認ポイント、定期テストが塾で使われたときの考え方、教育委員会でのルールづくりまで、教員・管理職・教育委員会それぞれの立場から読めるようにまとめました。

職務著作とは、会社や学校などで働く人が仕事として作った著作物について一定の要件をすべて満たすと、作った本人ではなく組織が著作者になる仕組みです(著作権法第15条)。教員が作った教材の著作権は原則として作った教員にあります。しかし職務著作が成り立つと学校(公立学校では設置者である自治体)が著作者となり、教員は著作権も著作者人格権も持たないことになるのです。

 

 

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教員が作った教材の著作権は誰のもの?

結論から言うと、原則は作った教員本人です。学校著作権ナビゲーターとして研修に伺うと、「自分で作ったプリントなのに、自由に渡してはいけないのですか」と聞かれることがあります。その答えを考えるために、まず基本を確認しておきましょう。

著作権は、作品を作った瞬間に自動的に生まれる権利です。特許などのように登録や申請といった手続きは必要ありません。そして最初に権利を持つのは、原則として作品を作った本人です。法律ではこの人を「著作者」と呼びます。

著作者の権利は大きく2つに分かれます。財産としての権利である「著作権」と、作者の気持ちを守る「著作者人格権」です。著作者人格権には次の3つの権利が含まれています。

権利内容
公表権作品を公表するかどうかを決める権利
氏名表示権名前をどう表示するかを決める権利
同一性保持権内容を勝手に書き換えられない権利

3つの権利の具体例は、学校で知っておきたい著作者人格権で詳しく解説しています。

著作者人格権とは?3つの権利と職務著作を学校の先生向けに解説
著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)とは何かを、学校の先生向けに解説します。先生が作るプリントや試験問題と「職務著作」の関係、子どもの作品をコンクールに出すときに確認したい3つのポイントもまとめました。

 

大切なのは、著作者人格権は作った人だけのもので他人に譲ることはできないという点です。しかし、この「作った人が著作者」という原則には例外があります。それが職務著作なのです。

 

 

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職務著作が成り立つ5つの要件とは?

職務著作が成り立つには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 法人等の発意に基づくこと(組織の指示や企画で作ること)
  2. 法人等の業務に従事する者が作成すること
  3. 職務上作成すること(仕事として作ること)
  4. 公表するとすれば、法人等の名義で公表されるものであること
  5. 契約や勤務規則などに別段の定めがないこと

この5つが揃うと、学校側が著作者になります。そうすると作った教員は、著作権だけでなく著作者人格権も持たないことになります。

▶ 動画では2:29〜で詳しく解説しています

 

授業スライドやワークシートは職務著作に当たる?

では、教員が作った教材は職務著作に当たるのでしょうか。これは一律には言えません。

授業のための教材は職務著作に当たる場合が多い、という見解があります。一方で、授業スライドなどは教員個人の名前で出すことが多いため、名義の要件に当てはまらないという見解もあります。公立学校か私立学校か、自治体や学校のルールによっても判断が分かれるところです。

 

児童生徒の作品は職務著作にならない

なお、児童生徒が授業で作った課題の作品は職務著作にはなりません。子どもたちは学校に雇われているわけではないため「業務に従事する者」に当たらないからです。児童生徒の作品の扱いは児童生徒の作品と著作権で詳しく取り上げています。

子どもの作品を掲示・掲載するときの著作権|公表権・氏名表示権・同一性保持権
子どもが描いた絵や作文にも著作権があります。掲示・学校だより・ウェブ掲載・コンクール応募の前に、何を確認すればよいか。公表権・氏名表示権・同一性保持権の3つを中心に、掲載時の著作権(財産権)や卒業生作品の扱いまで学校の具体例で解説します。

 

 

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教材を「コピーさせて」と頼まれたら確認したい2つのこと

自分の教材をコピーさせてほしいと頼まれた場面を少し想像してみてください。同じ学年を組む同僚なら「自由に手直しして使っていいよ」と思うかもしれません。研究会で知り合った他校の先生なら「作った人の名前は残してほしい」と思うかもしれません。教育実習生なら「まだ試行段階の教材は見せられない」と思うこともあるでしょう。

このように、相手によって許可したい条件は変わります。利用規約が会社ごとに違うのも権利者それぞれに「こう使ってほしい」という思いがあるからです。権利者の側に立ってみると、利用規約の意味がよく分かるのではないでしょうか。

ただし、実際に教材のコピーを許可する前に確認したいことが2つあります。

 

1. 許可を出せるのは自分とは限らない

その教材が職務著作に当たる場合、著作者は学校や自治体になります。そのときは、外部からのコピーや利用を認めるかどうかを決めるのは教員個人ではありません。学校として条件を示して許可したり断ったりすることになります。迷ったときは一人で判断せず、管理職に相談すると安心です。

 

2. 教材の中にある他人の著作物は別に考える

ワークシートに、教科書の文章や新聞記事、イラストなどを載せることもあると思います。これらは通常、著作権法第35条(授業の過程での利用を一定の条件のもとで認める規定)を根拠に使っている場合が多いでしょう。

ポイントは、第35条を根拠に使った資料を授業以外の目的で外部に渡す場合です。この場合は原則として、改めて著作権者の許諾が必要になります。自分が作ったオリジナルの部分と他人の著作物の部分を分けて考える必要があるのです。なお、第35条は授業を担当する教員と授業を受ける子どもによる利用を認める規定のため、教員どうしで教材を共有する場面には、そのまま当てはまらない点にも注意が必要です。

教材の中の部分外部に渡すときに判断するのは
自分が作った部分(職務著作に当たらない場合)作った教員
自分が作った部分(職務著作に当たる場合)学校(迷ったら管理職に相談)
教科書の文章・新聞記事・イラストなど他人の著作物それぞれの著作権者(原則として改めて許諾が必要)

▶ 動画では5:45〜で詳しく解説しています

▼著作権法35条について解説しています

著作権法第35条で迷いやすい3つの条件|学校の授業でコピー・配信はどこまでOK?【超基礎解説②】
著作権法第35条は、授業のためなら一定の条件で著作物をコピー・配信できる特別ルールです。守るべき3つの条件と、オンライン授業を支える補償金制度(サートラス)まで、著作権をわかりやすく解説する超基礎シリーズの2本目です。

 

 

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定期テストの問題が学習塾で使われていたら?

「定期テストの問題が学習塾で使われているようです」という相談もよくいただきます。

テスト問題に創作性があり学校に著作権がある場合には、学校として利用をやめてほしいと求めたり、条件付きで認めたりという判断ができます。ただし、単純な計算問題には創作性が認められにくいことに注意が必要です。また、問題文に他人の文章を使っている場合は、その部分について学校だけでは許可を出せないため、権利関係を事前に整理しておく必要があります。誰が権利を持っていて誰が決めるのかを考える、大切な事例と言えるでしょう。

▶ 動画では6:30〜で詳しく解説しています

こうした著作権の問題を校内研修で体系的に扱いたい場合は、研修テーマの一覧もご覧ください。

 

 

教育委員会・学校全体でのルールづくりのポイント

公立学校の場合、職務著作で著作者となる「法人等」は学校の設置者である自治体です。教育委員会はその機関に当たります。そのため教育委員会は、教員の教材を組織としてどう扱うかを考える立場にあります。

ここで思い出したいのが、5つの要件にあった「別段の定めがないこと」です。裏を返すと、あらかじめルールを定めておけば教材の扱いをはっきりさせられるということです。たとえば大学では、大学が権利を持つ著作物と教職員が権利を持つ著作物を規則で分けて定めているところがあります。教育委員会でも、どの教材を誰の著作物として扱うか方針を決めておくことで、現場の迷いを大きく減らせると考えられます。

 

教育委員会が作る共通教材と第35条

もう一つ知っておきたいのが教育委員会が作る共通教材です。著作権法第35条は、授業を担当する教員と授業を受ける子どもによる利用を認める規定です。そのため、教育委員会が管轄の学校で共通に使う教材などを作成・配付する場合には、原則として第35条は適用されません。

教員が作った教材を教育委員会のウェブサイトなどで共有するときには、次の2点をしっかり確認しておきましょう。

  • 教員が作った部分の権利者は誰なのか
  • 他人の著作物が含まれていないか

▶ 動画では7:16〜で詳しく解説しています

 

立場ごとに確認したいポイント

立場確認すること
教員自分が決めてよい教材かどうか
管理職学校として判断すべき教材かどうか
教育委員会どんなルールで扱うかの整理

 

 

よくある質問(FAQ)

Q. 教員が作った教材の著作権は学校のものですか?
A. 原則は作った教員のものです。ただし、職務著作の5つの要件をすべて満たす場合は、学校(公立学校では設置者である自治体)が著作者となり、教員は著作権も著作者人格権も持たないことになります。

Q. 授業スライドは職務著作に当たりますか?
A. 一律には言えません。授業のための教材は当たる場合が多いという見解がある一方、教員個人の名前で出すことが多いため名義の要件に当てはまらないという見解もあります。自治体や学校のルールによっても判断が分かれます。

Q. 定期テストの問題が学習塾で使われていたら、学校は止められますか?
A. 問題に創作性があり、学校に著作権がある場合は、学校として利用をやめるよう求めたり条件付きで認めたりできます。ただし単純な計算問題は創作性が認められにくく、問題文に他人の文章を使っている部分は学校だけでは許可を出せません。

Q. 児童生徒の作品は学校の著作物になりますか?
A. 授業で作った課題の作品は職務著作にはなりません。児童生徒は学校に雇われているわけではないためです。

Q. 第35条を根拠に教材に載せた新聞記事を他校の先生に渡してもよいですか?
A. 授業以外の目的で外部に渡す場合は、原則として改めて著作権者の許諾が必要になります。自分が作った部分と他人の著作物の部分を分けて考えましょう。

 

 

まとめ

教材の著作権は原則として作った人にありますが、要件を満たすと職務著作として組織のものになります。教員は自分が決めてよい教材かを確認し、管理職は学校として判断すべき教材かを見極める。そして教育委員会は、どんなルールで扱うかを整理する。立場によって確認すべきポイントが変わってくるのです。

いたずらに恐れるのではなく、権利者の目線を持ってみるとルールの意味が見えてきます。ぜひ一度、身近な教材の扱いについて考えてみてください。


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この記事は、動画「教員が作った教材の著作権は誰のもの?職務著作の5つの要件を解説」をもとに作成しました。

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この記事を書いた人
原口直

学校著作権ナビゲーター

東京学芸大学卒業後、大手芸能プロダクショングループ勤務を経て音楽科教諭に。東京都公立中学校および東京学芸大学附属世田谷中学校で勤務。元・東京学芸大学こども未来研究所 教育支援フェロー。

2020年より、学校現場での経験を活かし、机上の法律と教育現場をつなぐ「学校著作権ナビゲーター」として活動を開始。教員・教育実習生・子どもたちに向けて、著作権への理解を深める講演・情報発信・執筆活動を行っている。

音楽文化事業に関する有識者委員会委員(JASRAC)/共通目的事業委員会専門委員(SARTRAS)/東京学芸大学 附属学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー(2025年〜)

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