漫画は、子どもにとってとても身近な著作物です。この記事では、図工・美術や運動会の看板などで漫画のキャラクターを描くときの著作権の考え方、漫画の海賊版被害と違法ダウンロードのルール、漫画の著作権を学べる3つのサイトを紹介します。漫画を著作権教育の教材としてどう生かせばよいか一緒に考えていきましょう。
知的財産権・著作権で出てくる「著作物」について、1.著作物の種類、2.各著作物を学ぶ方法、3.著作物に応じた教育、をシリーズで紹介しています。今回は「漫画」を取り上げます。
運動会の看板や授業の作品に漫画のキャラクターを描くことは漫画の「複製」にあたり、原則として著作権者の許諾が必要です。ただし、教育課程に位置づけられた授業や行事のなかで、教育効果を高めるうえで必要と認められる範囲であれば、著作権法第35条(授業の過程での利用を認める規定)により一定の条件のもとで許諾なく行えると考えられます。学校のウェブサイトや広報誌への掲載や外部のコンクールへの出品は授業の目的を離れるため、原則として許諾が必要と考えられます。
学校での著作権の取り扱いについては、まず「【学校の著作権】第35条って結局どこまでOK?教育目的の例外と現場のQ&Aを解説」の動画をご覧ください。

学校で漫画のキャラクターを描いてもいい?著作権法第35条で考える
図工・美術や技術・家庭の作品をつくるときに漫画のキャラクターを描く。運動会や文化祭の看板や行事のしおりの表紙に漫画のキャラクターを描く。どれも、学校のなかで日常的に目にする「学校内の漫画」ですね。
著作権の原則は、「作品は著作権者(多くの場合は作った人)のもの」です。そのうえで学校には、授業の過程での利用に限って、一定の条件のもとで許諾なく使える例外(著作権法第35条)があります。「学校は例外」とひとまとめに言われることもありますが、学校で行うことのすべてが例外になるわけではありません。
ポイントは、 その利用が「授業の過程」にあたるかどうかです。教科の授業はもちろん、教育課程に位置づけられた運動会や文化祭などの学校行事も、授業の過程にあたると考えられています。したがって、行事の教育効果を高めるうえで必要と認められる範囲であれば、看板などにキャラクターを描くことは許諾なく行えると考えられます。
| 場面 | 著作権の考え方 |
|---|---|
| 図工・美術、技術・家庭の授業で、作品にキャラクターを描く | 授業の過程での複製として、第35条により一定の条件のもとで許諾なく行えると考えられます |
| 運動会・文化祭の看板や、行事のしおりの表紙に描く | 教育課程に位置づけられた行事で、必要と認められる範囲であれば同様に考えられます。行事が終わったあとも常設的に展示する場合は、条件を満たさない可能性があります |
| クラスTシャツにキャラクターを入れる | 業者に発注したり行事のあとも着たりする場合は、個別に確認しておくと安心です |
| 看板・Tシャツ・しおりを学校のウェブサイトや広報誌に載せる | 授業の範囲を超えるため、原則として著作権者の許諾が必要です |
| 授業で作った作品を外部のコンクールや作品展に出品する | 授業の目的以外に使うことにあたるため、原則として許諾が必要と考えられます |
▼運動会の看板に描くことの扱いは、こちらでも詳しく解説しています

第35条には条件があります。必要と認められる限度であること、公表された著作物であること、著作権者の利益を不当に害しないこと、などです。「授業だから何でも大丈夫」ではなく、「授業のなかで必要な範囲で使っているか」を確かめる。この順番で考えると判断しやすくなります。
▶ 動画では7:15〜で詳しく解説しています
著作権法第35条に何が書いてあり、学校とどう関係するのかは、「著作権法第35条とは?学校の授業で著作物を使える条件を解説」の動画で解説しています。

漫画の海賊版被害はどれくらい大きい?
漫画は著作権法でどの種類の著作物?
著作権法の条文に「漫画」というカテゴリーはありません。著作権法第10条第1項第4号には「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」とあり、漫画は一般に、この美術の著作物の例として扱われています。
すべての著作物に「海賊版」がある
「海賊版」という言葉を聞いたことはありますか。言葉は知らなくても、映画の上映前に流れるカメラ男が登場する映画盗撮防止のCMを見たり、テレビ番組で「番組を許諾なくアップロードすることは違法です」という表示を見かけたりしたことはあるかもしれません。
音楽や映画で耳にする言葉ですが、海賊版はすべての著作物にあります。よく話題になる音楽・映画のほかに、ビデオ・書籍・ソフトウェア、そして今回取り上げる「漫画」があります。
漫画は言うまでもなく、子どもにとってとても身近な著作物です。著作権教育をするにはもってこいの教材なのです。私が「週刊少年ジャンプ」を毎号読んでいた1994年は、売上部数が最高記録の653万部に達した年だったようです。『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』『ドラゴンボール』といった名作ぞろいで、『るろうに剣心』が始まった年でもあります。
2021年当時の被害額は1年で約1兆19億円
海賊版の被害はどの著作物でも大きいのですが、2021年当時、漫画の被害は著しく拡大していました。ABJ(出版物の海賊版対策を行う団体)の集計によると、日本国内からの海賊版上位10サイトへのアクセスは、2021年10月のたった1か月で約4億回を超えました。試算できたサイトだけでも、タダ読みによる被害額は2020年の1年間で約2,100億円、2021年の1年間で約1兆19億円でした。
これは少なく見積もった金額です。本来は漫画家さんや出版社に入るはずだったお金だと考えると、とても大きな被害だということがわかりますね。
▶ 動画では2:20〜で詳しく解説しています
漫画の違法ダウンロードは何が違法?(2021年1月施行の著作権法改正)
インターネット上の海賊版対策のために著作権法が改正され、2021年(令和3年)1月1日から、ダウンロードの規制が広がりました。
それまでの音楽・映像に加え、雑誌や書籍、漫画など著作物全般について、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードすることが違法になりました。ただし、スクリーンショットを撮るときの写り込みや漫画の1コマ〜数コマなどの軽微なもの、二次創作・パロディなどは対象外とされています。
自分が海賊版を公開する側になるのは、もちろん違法です。そして使う側も、違法と知りながらダウンロードすれば違法になる、という点がこの改正の大切なところです。
さらに、正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を繰り返し・継続してダウンロードした場合は、権利者が告訴すれば、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(両方が科されることもあります)に問われる可能性があります(著作権法第119条第3項第2号)。なお、刑罰の「懲役」は、2025年6月から「拘禁刑」に変わっています。
改正の詳しい内容は文化庁のQ&Aで確認できます。
▶ 動画では3:11〜で詳しく解説しています
漫画の著作権を学べる3つのサイト
漫画の著作権を学ぶための3つのサイトを、子どもの学年に合わせた使い方とともに紹介します。
総務省のサイト「上手にネットと付き合おう!~安心・安全なインターネット利用ガイド~」
総務省の「上手にネットと付き合おう!~安心・安全なインターネット利用ガイド~」には、「インターネット上の海賊版対策」の特集ページがあります。
ページの初めに、「海賊版を利用すると、こういうよくないことがある。著作権法が改正されて、よいことにつながる」という、わかりやすい図式があります。『僕のヒーローアカデミア』の海賊版対策のYouTube動画にもリンクしていて、著作権法改正の内容もわかりやすく書かれています。
小学校高学年以上であれば、少し解説を加えると理解できる内容です。
一般社団法人ABJ「STOP!海賊版」
ABJとは「Authorized Books of Japan=公認された日本の本」という意味です。つまり「正規のサービスである=海賊版でない」という証明です。
ここでは『STOP!海賊版』として、様々な取組がされています。
人気漫画家16名による書き下ろしの海賊版対策の漫画を、ウェブ上で静止画と動画で見られます。日本語のほかに、英語・中国語でも読めます。
ほかにもメッセージバナー広告では、「海賊版」と検索した人に人気漫画24作品のキャラクターが閲覧をやめるよう呼びかけるメッセージが表示される仕組みがあります。江戸川コナンや桜木花道たちが、それぞれの言葉で海賊版の利用をやめさせようとします。
また、正規のサービスであることを示す「ABJマーク」の策定・掲示・普及啓発も行っています。海賊版を見極める手がかりになるので、正しい情報を選び取る情報モラル教育に適したサイトです。
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)
こちらは広く「漫画」を含めたコンテンツについての情報を得られます。
最近は、海賊版だけでなく、ファスト映画や海外での知的財産権の問題も取り上げられています。前述の「STOP!海賊版」の情報や著作権制度を所管する文化庁の情報も手に入ります。
中学生や高校生の資料集めに適したサイトと言えます。
▶ 動画では4:04〜で詳しく解説しています
漫画を著作権教育に生かすには?作り手の視点を育てる授業
漫画を著作権教育に結びつけるなら、授業や行事の一環として制作する、その過程で話すのが自然でしょう。キャラクターを描く場面そのものが、「この絵は誰のものだろう」と考えるきっかけになります。
別の方法として、子どもたち自身に新しいキャラクターを考えさせたり、既存のキャラクターの魅力をプレゼンさせたりして、著作者の気持ちを体験させるのも有効です。
漫画やキャラクターの素晴らしさは、誰よりも子どもたちがよく知っています。美術の部活動や趣味で詳しい子ども、漫画が大好きな子どももいます。子どもの気持ちをくすぐる授業を展開しましょう。
大切なのは、 著作物の使い手としてだけでなく必ず作り手としての視点を持たせることです。
学校著作権ナビゲーターとして活動を始める前、中学校音楽科で著作権の授業をしたときのことです。海賊版や違法アップロードの話を一通りしたあとに、正直な生徒が「でも、ここで見られますよ」とサイトを見せてくれました。誰でも探せてしまううえに、中学生にとっては、そのサイトを知っていることがヒーローになってしまうのです。
音楽の授業では、AKB48のCDを題材にして知財教育を行いました。「【音楽の新学習指導要領】音楽科で教える知的財産権の指導方法の実践例」の動画で、詳しい内容を紹介しています。
▶ 動画では8:23〜で詳しく解説しています
よくある質問(FAQ)
Q. 運動会の看板に漫画のキャラクターを描いてもいいですか?
A. 教育課程に位置づけられた行事で、その教育効果を高めるうえで必要と認められる範囲であれば、授業の過程での複製として、著作権法第35条により一定の条件のもとで許諾なく行えると考えられます。行事が終わったあとも常設的に展示する場合は、条件を満たさない可能性があります。
Q. キャラクターを描いた看板の写真を学校のウェブサイトや広報誌に載せてもいいですか?
A. 学校のウェブサイトや広報誌は誰でも目にできるため授業の範囲を超えます。原則として著作権者の許諾が必要です。
▼キャラクターごとの公式ルールを確認する

Q. 海賊版の漫画をダウンロードするのは違法ですか?
A. 2021年1月1日から、違法にアップロードされたものと知りながら漫画などをダウンロードすることは違法になりました(漫画の1コマ〜数コマなど軽微なものは対象外)。正規版が有償の作品を繰り返しダウンロードすると、権利者の告訴により刑事罰の対象になる可能性があります。
Q. 漫画は著作権法でどの種類の著作物ですか?
A. 条文に「漫画」というカテゴリーはありません。漫画は一般に、著作権法第10条第1項第4号の「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」の例として扱われています。
まとめ:漫画を使って学校で著作権教育をしてみよう
漫画は、子どもにとって身近だからこそ、著作権を「自分ごと」として考えられる教材です。校内での制作は授業の過程として一定の条件のもとで行える一方、学校のウェブサイトや広報誌に載せるときや外部のコンクールに出すときは、原則として許諾が必要になります。この境目を、制作の場面で子どもたちと一緒に確かめてみましょう。
著作権教育と同時に、著作者や著作物、文化を守る心を育てる教育も同じくらい大切です。ぜひ明日の授業や行事づくりで考えてみてください。
著作権研修・出前授業のご依頼を承っています。研修の内容・形式・費用の考え方、よくある質問は研修のご案内にまとめています。
この記事は、動画「漫画で著作権教育をしよう|海賊版の教え方と学校行事・図工美術でのキャラクター利用」をもとに作成しました。




