2026年8月10日、青森県高等学校教育研究会 音楽部会の研修会で、「生成AIの基本と学校教育における著作権の境界線」をテーマに140分の研修を担当しました。会場は青森市内の施設。県内各地から集まった高校音楽科の先生方、約30名と一緒に考える時間になりました。
同部会にお招きいただくのは、3年前(2023年)に続いて2回目です。再びご依頼をいただけたことを大変ありがたく受け止め、内容を大きくアップデートして臨みました。
▼3年前の研修報告はこちら

なお、同日午後には「郷土の伝統音楽」の指導法と新学習指導要領をテーマにした研修も行いました。こちらは音楽教育サイト「原口直の一歩先ゆく音楽教育」で報告しています。

高校音楽科の先生方と140分、双方向で考える研修に
研修の冒頭では、AhaSlides(スマートフォンから匿名で回答できる投票ツール)を使って、教員歴や専攻、学校の場所、「昨日聴いた曲」などを尋ねました。回答をその場で画面に映し、会場の先生方の顔ぶれを共有してから本題に入ります。
教員歴は「16年以上」が最も多く、経験豊富な先生方が中心でした。一方で、「著作物を使う・使わせるときに迷ったこと」を尋ねると、次のような声が次々に集まりました。
- 「授業でコピー楽譜を使いたいがOK?」
- 「自分たちの演奏をYouTubeにアップすること、YouTubeに上がっているものを教材で使いたい時」
- 「テレビで流れている曲をそのまま演奏会の一部で流していいかどうか?」
- 「何も考えずに著作物を使っているので迷ったり困ったりした経験がない。逆にこういう考えが怖いと自覚してます。」
楽譜、演奏会、動画。学校著作権ナビゲーターとして各地の研修に伺うなかでも、音楽科の先生方の悩みはこの3つに集中します。授業だけでなく、部活動や地域での演奏まで、音楽科は著作物と関わる場面がとても多い教科なのです。
研修の具体的な内容(主なトピック)
今回扱った主なトピックは次のとおりです。条文や制度の詳しい解説は、このサイト内で解説記事にまとめています。ぜひご覧ください。
- 著作権を知るべき理由:子どもが著作権トラブルの当事者になり得ること、生成AIの急速な広がりなど、いま学ぶ意味を確認しました
- 著作権の基礎と学校の授業における例外:著作権法第35条(授業の過程での利用について、一定の条件のもとで無許諾の利用を認める規定)の考え方を、要件とあわせて整理しました
- 授業目的公衆送信補償金制度とSARTRAS:授業でのオンライン送信を支える仕組みを紹介しました
- 学習指導要領・教員採用試験・教科書にみる著作権:実際の教員採用試験の問題に挑戦し、「許諾が必要か・不要か」をAhaSlides上で仕分けてもらいました
- 生成AIの基本と著作権の境界線:ChatGPTやGemini、音楽生成AIのSunoなどを紹介し、ハルシネーション(AIがもっともらしい誤りを出力すること)も含めて整理しました。生成AIと著作権の関係は現在も整理が続いている論点のため、文化庁の最新の考え方を確認する大切さもお伝えしました
- 「学習指導案」は誰のもの?:先生ご自身が著作者になる立場から、自作の指導案を「誰に、どこまで使ってよいと許すか」を考えました
- 質疑応答
学習指導案についての問いには、「同業者であればOK」「研究授業の参観者なら」「非営利であればOK」「完全フリー。自由に活用してほしい」など、先生方の考えがはっきり分かれました。著作権は「守る」だけの話ではありません。自分の作品をどう扱ってほしいかを考える、先生自身の権利の話でもあるのです。
▼研修で取り上げた項目の解説記事



研修のポイント:「今日から、自分から、できることから」
冒頭で「『著作権』からイメージする言葉」を尋ねたところ、「楽譜」「JASRAC」「コピー」と並んで、「難しい」「よくわからない」「敷居が高い」といった言葉が多く挙がりました。
大切なのは、すべてを一度に理解しようとしないことです。いたずらに恐れるのではなく、次に楽譜をコピーするとき、次に動画を共有するときに「一つだけ確認する」。今回は、「今日から、自分から、できることから」始める姿勢を、いちばん伝えたかったメッセージとして研修全体を組み立てました。
参加者の声
研修主催者の声
ご依頼の決め手について、ご担当の先生から次のように伺いました。
3年前に同研究大会講師として招聘し、参加者からも大変好評であり、さらに深く学びたいと考えたため。
原口を知ったきっかけはYouTubeだったそうです。印象に残ったこととしては、次のようにお寄せいただきました。
アップデート、ブラッシュアップされた研修内容と双方向でニーズをつかみながら進行していること
この内容を勧めたい相手として、教員に加えて、大学・大学院生、管理職、教育委員会を挙げてくださいました。
研修参加者の声(一部抜粋)
3年前の研修から自分の中の著作権に関するアンテナが更新されていると改めて感じています。
知らないワードや短いスパンで、著作権のやり方が変わっていることがわかった。常に確認が必要。勉強になりました。
第35条について知ることが大切だと知りました。また、個別に条件を確認することが必要だが、そのためのコツや慣れが必要だと感じました。
正直、著作権のことは勉強したい気持ちあったけど、情報量多くて複雑でなんとなく知らないフリして過ごしてました。詳しいことが知れてよかったです。
去年、著作権についての座学を1コマやりかけたけど授業できず悔やんでいたから、今年は絶対に扱おうと思っていて、今日の研修会で著作権のお話を聞けてとてもラッキーでした。(中略)生徒たちも今後関わることの多い著作物関係の話は音楽の授業を通しても伝えるべきだなって改めて思うことができました。
研修中アンケートから見えたこと
AhaSlidesの回答から、特徴的だった結果をご紹介します。
- キーワードの認知度:「著作権」「いらすとや」は「知っている」寄りの回答が多い一方、「著作権法第35条」「SARTRAS」は4段階で平均2点台半ばと、相対的に低い結果でした
- 生成AIの利用経験:回答した26名のうち24名が「使ったことがある」と答えました。場面は校務が最も多く、授業、プライベートと続きます
- 生成AIで「ラクになった」か:「感じる」「まあ感じる」がほぼ半々でした
生成AIはすでに身近な道具になっています。しかし、その土台となる著作権のルールには、まだ「知らない」が残っている。このギャップを埋めることが、これからの研修の役割だと改めて感じました。
おわりに
3年ぶりに青森県の先生方とご一緒できて大変うれしい一日でした。前回の研修を覚えていてくださった方、新たに出会えた方、そして多くの質問を寄せてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
著作権も生成AIも変化の速い分野です。だからこそ、一人で抱え込まず確認する習慣を少しずつ育てていきましょう。今回の研修が先生方の「今日から」の一歩のヒントになれば幸いです。
研修のご依頼について
音楽科の部会・研究会向けの研修や、生成AIと著作権をテーマにした研修も承っています。対象や時間に合わせて内容を組み立てますので、お気軽にご相談ください。
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